論考
「望まない妊娠」について
吉村 寿博
1
Toshihiro YOSHIMURA
1
1九州記念病院産婦人科
pp.211-213
発行日 1987年3月15日
Published Date 1987/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207440
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○はじめに
「望まない妊娠」の問題,即ち,避妊法,あるいは人工妊娠中絶をめぐる事柄は,人類にとって永遠の問題である.現在においても,避妊を確実に行うのは,実際問題として容易ではない.
わが国においては,昭和58年,出生数約151万,自然死産数(妊娠12週以降の死児の出産)約4万に対して,優生保護法による人工妊娠中絶数は約57万となっている1).これは,昭和30年の117万人をピークに次第に減少してきてはいるが,最近減少傾向は頭打ちで,これ以上の減少はあまり期待できず,公衆衛生上無視できない数である.またこの問題は,現在検討中である低エストロゲン含有経口避妊薬の解禁を控え,また,新しい堕胎薬や妊娠早期診断薬の開発,あるいは,異常妊娠,医療事故などに対する患者の欲求の増大,婦人の経済的自立等の社会的変化ともからみ,ここで再度考えておく必要がある.
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