発言席
いのちの対策—リスク科学の推進を望む
松原 純子
1
1東京大学医学部保健学科疫学教室
pp.171
発行日 1991年3月10日
Published Date 1991/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900200
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現在53億の地球人口は,あと10年たらずの西暦2000年には60億を越え,来世紀なかばには100億を越すだろうと言われている。人間が増えれば,それを支える家畜や魚や沢山の農作物を増やさなければならない。モノの大量生産,大量消費は地球資源の枯渇を加速する。
私たちが自動車を走らせているとき,シダや爬虫類が栄えた2億年も前の太古の時代の生物の亡骸から,何億年もかかって地の底でできた石油,その石油から精製したガソリンを,私たち現代の人間が一気に燃やしているということを,一体何人の子どもたちが知っているだろうか。45億年の歴史を持つ地球,35億年もかけて育まれた地球上の生命をいとしく思う。大昔のうっそうたる植物や海洋の生物から,何億年もかかって作られた石炭や石油を,20世紀の人類は一挙に掘り出して,煙にしている。
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