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綜説
大規模臨床試験における統計学的数値の読み方
How to Interpret Statistical Data from Large Clinical Trials
後藤 雅史
1
,
香坂 俊
2,3
Masashi Goto
1
,
Shun Kohsaka
2,3
1国立病院機構京都医療センター総合内科
2慶應義塾大学医学部循環器内科
3慶應義塾大学医学部循環器内科医療科学系臨床/統計大学院コース
1Department of General Internal Medicine, National Hospital Organization Kyoto Medical Center
2Department of Cardiology, Keio University School of Medicine
pp.879-885
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102561
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まえがき
昨今,「ビッグデータ」や「統計マインド(あるいは統計的思考法)」などという用語が巷間でも飛び交うようになり,これまでになく統計的な数値の読み方に注目が集まっている.近代医学においては,20世紀末のEvidence-Based Medicineの考え方の導入と相まって,種々の臨床的な疑問に対して多数の大規模ランダム化臨床試験(RCT)が行われてきており,その結果がDecision Makingを規定している.例は枚挙に暇がないが,スタチンの使用,心房細動の抗凝固療法,急性冠動脈症候群に対するカテーテルのタイミングなど,すべてここ10年間のRCTの成果といえる.
この稿のテーマは「大規模臨床試験」における統計学的数値の読み方ということであるが,上記のようなRCTに関しては計測されている項目も計測されていない項目も理論上は均質化しているはずなので,「十分なN」さえ担保されていればあまり統計的な数値に関するスキルは実は必要ない.基本的に2群の比較でよいはずである.つまり,ランダム化という手法によって,理論上は2群間の背景は均等に分けられているので([参考]大数の法則,あるいは中心極限定理),あとは「事前に決定されたアウトカム」の比較のみを行えばよいということである.よって,稿の前半部は主に2群比較に重点をおき,話を進めていきたい.むしろこのときは「十分なN」と「事前に決定されたアウトカム」というところが実はランダム化試験の最大のピットフォールとなりうるので,この部分を前半部のラストで取り上げる.
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