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はじめに
特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)は,特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias;IIPs)に分類される7疾患のなかで最も頻度が高く,5年生存率が30~50%と予後不良の難治性肺線維化疾患である.IPFは,肺胞領域の炎症,すなわち胞隔炎に始まり組織修復に伴って線維化が進行する疾患であると考えられてきたが,近年慢性の肺胞上皮傷害とそれに続く異常修復がIPFの本態であるとする炎症を重視しない仮説が提唱された.
この異常修復において様々な線維化関連因子が報告されているが,そのなかで線維芽細胞の増殖,筋線維芽細胞への分化,細胞外基質(extracellular matrix;ECM)産生などの作用を有する増殖因子が重要な役割を果たしていると考えられている.これらの増殖因子には,transforming growth factor-β(TGF-β),platelet-derived growth factor(PDGF),fibroblast growth factor(FGF),vascular endothelial growth factor(VEGF),connective tissue growth factor(CTGF),insulin-like growth factor-Ⅰ(IGF-Ⅰ)などがある.特にTGF-βとPDGFは中心的な役割を担っていると考えられており,TGF-βは線維芽細胞に作用し強力なECM産生刺激作用と筋線維芽細胞への分化促進作用をもつ一方,PDGFは線維芽細胞に対し強い増殖活性および遊走活性をもつことが特徴である.
現在,様々な角度から抗線維化薬の開発研究が進められているが,増殖因子は治療薬開発の最も有望な分子標的の一つと考えられている.本稿では,間質性肺炎/肺線維症における増殖因子の役割について概説する.
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