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はじめに
アスペルギルス症を引き起こすAspergillus属は,糸状菌と呼ばれる真菌グループの一種である.糸状菌という名の通り,菌糸という糸状の菌体を伸長させることで増殖する.そして,ある程度伸長した時点で空気に接した部分に分生子頭と呼ばれる器官を形成し,分生子が生み出される(図1).分生子とは無性的に形成される胞子の一種であり,巨大コロニーの緑色や黒色といった色は分生子の色である.分生子は疎水性のため,長時間の浮遊中も空気中の水分が粒子周囲を覆うことなく,3μm前後の粒子径を保つ.つまり,空気中を落下することなく浮遊し続ける.本菌は,空気中に10個/mm3前後の分生子が浮遊している環境真菌のため,われわれは日々それを吸入している1).
Aspergillus属はありふれた真菌であり,約300種の菌種の多くはヒトへの病原性を持たない.日本では麹として味噌や醤油,日本酒を作るために用いられているコウジカビもAspergillus属である.しかし一部の菌種,A. fumigatus,A. niger,A. terreus,A. flavus,A. nidulans,A. versicolorなど約10菌種がヒトへ病原性を持ち,特にA. fumigatusがアスペルギルス症の原因真菌となることが多い2).
分生子の侵入門戸は肺,副鼻腔,外耳道が主であり,そのなかでも肺が最も多い.それぞれ肺アスペルギルス症,副鼻腔アスペルギルス症,外耳道アスペルギルス症に分けられる.副鼻腔アスペルギルス症は中枢神経系へ物理的な距離が近いこともあり,中枢神経(脳)アスペルギルス症へと進展することもある.本稿では,最も頻度の高い肺アスペルギルス症に焦点を当てて概説する.
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