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最近の臨床一流雑誌に掲載されている研究の大半が大規模長期介入試験の成果報告である.逆にいうと,数千例規模で無作為化比較試験(厳密には二重盲検試験)が行われないと臨床一流雑誌に掲載されないと言っても過言ではない.さらに,対象症例,背景因子,患者のドロップアウト数とその理由,エンドポイント,解析法などいくつかの項目にわたる吟味が必要とされる.
このような傾向と診療行為におけるevidence—based medicine(EBM)の役割の拡大は表裏一体をなすものと考えられる.話をわかりやすくするためにEBMに基づく診療行為を具体的に述べる.深部静脈血栓症患者の肺血栓症予防に下大静脈フィルターを留置したほうがよいか否かという疑問に対して,まず深部静脈血栓や肺血栓をキーワードにメドラインなどを利用して文献検索などの情報収集にあたる.収集された文献にっき以下に述べる10項目について吟味する.(1)患者の割付は無作為か,(2)研究対象患者のすべてが結果に反映されているか,(3)患者,医師,研究者がいずれも患者の治療内容を盲目化されているか,(4)研究の最初の患者背景は両群で同じか,(5)研究対象の治療以外の治療は両群で同じか,(6)結果はどれほど大きなものか(効果の差),(7)結果の予測はどれほど正確か(信頼区間の幅),(8)その結果を自分の患者に当てはめることができるか,(9)すべての重要な転帰が検討されているか,(10)その治療による益は,害やコストに見合ったものか.そのうえで,信頼がおけ患者の状況にあった文献の結論を参考に下大静脈フィルター留置の是非を決める.以上述べたような疑問,信頼性の吟味のプロセスに対応できかつ治療の方向を決めるような結論を出し得る研究は,現時点において大規模長期介入試験しかないと思われる.
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