Japanese
English
綜説
カオス理論と呼吸器疾患
Chaos Theory and Respiratory Diseases
越久 仁敬
1
Yoshitaka Oku
1
1兵庫医科大学生理学生体機能部門
1Division of Physiome, Department of Physiology, Hyogo College of Medicine
pp.611-616
発行日 2010年6月15日
Published Date 2010/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101498
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はじめに
気象予報士はどれくらい先の天気を予測できるのだろうか.明日の天気は,結構正確に予測できているようである.週間予報も一日二日の誤差はあれ,参考にできる程度の予報はできているようだ.しかし,1カ月先の天気となると,ほとんどあてにならない.では,スーパーコンピュータ上で動く地球シミュレータでは正確な予測ができるのかというと,何通りもシミュレーションをやって,その平均値をとる,というようなことをやっている.これは,コンピュータの計算が不正確だから,あるいは観測データにノイズが含まれているからというわけではなく,ほんの僅かな初期値の違いによって1カ月先の気象予測は全く違うものになるからである.このように,法則に基づいた動きであるのに,要素が複雑に絡み合っているために,先の予測が立たないような系を「複雑系」といい,それを扱う理論の一つがカオス理論である.それが呼吸器疾患と何の関係があるというのか? 実のところ,カオス理論がどれほど呼吸器疾患に応用できて,診断や治療に結びついていくのか,筆者にはまだよく分からない.
本稿では,できる限り平易な言葉でカオス解析の手法と,その呼吸器系への応用によって何がどこまで分かったかを解説し,今後の展望について考察する.
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