Japanese
English
綜説
アデノシンの呼吸調節作用
Effects of Adenosine on the Control of Respiration
越久 仁敬
1
Yoshitaka Oku
1
1京都大学胸部疾患研究所臨床生理部門
1Department of Clinical Physiology, Chest Disease Research Institute, Kyoto University
pp.529-535
発行日 1994年6月15日
Published Date 1994/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900875
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はじめに
アデノシン(adenosine)は内因性のヌクレオシドで,ATPの分解によって生成されるプリン中間代謝物質の一つである.その薬理学的作用については,アデノシンの半減期が非常に短い(約10sec以下1))ためもあって永い間注目されていなかったが,Berne2)によってアデノシンが冠動脈血流の制御に関与していることが証明されて以来,様々な方面で注目されることとなった3,4).アデノシンの作用は複雑で多岐にわたるが,Newby5)は,それらは全て局所のエネルギーの需要と供給のバランスの制御に関与するものであるという仮説を提唱している.すなわち,組織代謝率の亢進・血流低下・低酸素状態などによってエネルギーの需給関係が乱れると,ATPの分解が促進され,細胞外液中へその代謝産物であるアデノシンが放出される.そして,放出されたアデノシンは標的細胞表面にあるアデノシン・レセプターと結合して作用を発現し,エネルギーの需給関係を正常化させるというものである.実際,低酸素状態におけるアデノシン産生の増加は骨格筋・心筋・脳組織において証明されている6〜9).
アデノシンは中枢神経系での呼吸調節にも,酸素感受性の末梢化学受容器での情報伝達にも関与していることが示されている.アデノシンの呼吸調節に対する作用は末梢と中枢で全く異なっている.
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