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はじめに
呼吸活動は生命の維持にとって必須であり,生まれてから死ぬまで絶え間なく続けられる.われわれは,大脳皮質運動野からの指令で意識的にも呼吸することができるが,基本的な呼吸リズムや呼吸パターンは,脳幹部に存在するニューロンネットワーク(いわゆる呼吸中枢)によって作られる1).
哺乳類の呼吸中枢は,出生前に既に安定した呼吸リズムを生成できるまでに発達しているが,出生後も発育に伴い呼吸リズム生成機構は大きく変化する.新生動物では,延髄腹外側において,吻側に位置するparafacial respiratory group(pFRG)と尾側に位置するpreBötzinger Complex(preBötC)という2つのペースメーカー領域が存在し,pFRGの前吸息性(pre-I)ニューロンがpreBötCの吸息性ニューロンをトリガーして呼吸リズムが生成されているとされる2).一方,成熟動物では,この2つのオシレータの間に位置するBötzinger Complex(BötC)と呼ばれる主として抑制性の呼吸ニューロン群がpreBötCやpFRG,さらには橋呼吸群とネットワークを形成して呼吸リズムを生成していると考えられている(図1)3~5).成熟動物においてpFRGやpreBötCが,なおペースメーカー的役割をしているかどうかは未だ明らかではないが,大規模な呼吸ニューロンネットワークの中に統合されつつも,やはり重要な役割を担っていると推測される.
シナプス入力を全て遮断しても内因性に周期的バースト発火するニューロンをペースメーカーニューロンと呼ぶ.pFRGとpreBötCのいずれにもそのようなペースメーカーニューロンの存在が確認されている.では,ペースメーカーニューロンはどのようにして呼吸リズムを作るのだろうか? また,抑制性の呼吸ニューロン群のネットワークからどのようにして呼吸リズムは生まれるのだろうか? このように複数の要素がダイナミックに影響しあってできているシステムを理解するのは非常に困難である.このような動的システムの解析には,モデル化とシミュレーションが極めて有効な手段となる.
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