Japanese
English
綜説
呼吸制御の基礎と病態生理
Physiology and Pathophysiology of Respiratory Control
越久 仁敬
1
Yoshitaka Oku
1
1兵庫医科大学生理学講座生体機能部門
1Division of Physiome, Department of Physiology, Hyogo College of Medicine
pp.491-497
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101034
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はじめに
呼吸運動は,心臓のように臓器自体の自律性運動ではなく,脳幹部呼吸中枢の活動によって生じる.脳幹部の呼吸ニューロンネットワークは,相互の神経結合と細胞膜に存在するイオンチャンネル特性により外部からの入力信号がなくても内因性に周期活動を生成するが,様々な化学性呼吸調節と神経性呼吸調節を受けて最終的な呼吸中枢出力が決定される.端的に表現すると,化学調節系は代謝量変化に対して血液ガスを恒常状態に保つよう換気量の制御を行い,神経調節機構は最も効率よくガス交換が行われるよう呼吸パターンを制御する.このような呼吸調節は,覚醒時にも睡眠時にも,上位中枢活動とは関係なく無意識に行われており,自動調節と呼ばれる.それに対して,会話・歌唱・意識的な深呼吸・息こらえなどは,大脳の運動中枢による呼吸制御であり,行動性調節あるいは随意調節と呼ばれる.また,覚醒時には上位中枢で呼吸困難感が感じられるが,それを最小にしようと行動性に呼吸制御されると考えられている.われわれの個体では,これらの多階層の制御が見事に調和して最適な呼吸パターンが形成されている.
本稿では,これらの多岐にわたる制御機構のうち,呼吸リズム生成機構,化学性呼吸調節機構,呼吸器系の神経性調節機構,気道平滑筋の興奮伝播機構の4つに焦点を絞って,どこまでわかったのか知識を整理し,その臨床応用と今後の課題について考察する.
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