特集 栄養療法アップデート 前編
はじめに:栄養療法はいまだカオスである
安田 英人
1
Hideto YASUDA
1
1鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科
pp.243-244
発行日 2019年4月1日
Published Date 2019/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200620
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我々は,当たり前のように毎日3回の食事をとる。食欲は人間の3大欲求の1つであり,我々自身ではコントロールすることが困難な生理的欲求である。人間が生きるためには,糖質・タンパク質・脂質の三大栄養素のみならず,ビタミン・微量元素なども摂取することが必須であり,さまざまな生命活動の源となっている。当たり前のことであるが,栄養摂取は人間が生きるうえで欠かせない行動である。おそらく,この点に疑念を抱く医療従事者はいないであろう。しかし,患者が一度入院すると,特に重症患者であればあるほど,日常的に行っていた栄養摂取がさまざまな理由で障害される。その理由の1つとして,栄養摂取の必要性に対する医療従事者の認識の低さが影響しているのを目にする。多くの場合,重症化の原因疾患に対する治療介入はなされるものの,栄養療法に関しては「念のために絶食で」という言葉のもと,重症病態が落ち着いた頃にようやく目を向けられることが,いまだに多いことを痛感する。2009年にSCCM/ASPEN*1から重症患者における栄養療法のガイドラインが発表されてから,集中治療領域における栄養療法の空気が変わったように筆者には感じられる。しかしながら,発表から10年を経た今でも栄養療法に対する認識は,まだまだ「たかが栄養療法,されど栄養療法」であると,つくづく身に沁みることが多い。なぜ,栄養療法に対する認識に個人差があるのか。それは栄養療法におけるエビデンスが,いまだカオスであるからなのかもしれない。
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