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はじめに
病理遠隔診断(テレパソロジーtelepathology)は,今,大きな転換期にある.これまでは,診断者が遠隔地にあるCCDカメラ付きの顕微鏡をリモート操作で動かして迅速診断したり,メールに添付されてきた組織像のスナップ写真をみてセカンドオピニオンを提供したりしていた.これが,バーチャルスライドの出現で次世代の病理遠隔診断時代に突入した.バーチャルスライドは,1枚のプレパラート標本全てをスキャナーで高解像度に取り込み,デジタル化してしまう技術である.これにより,顕微鏡がなくても,パソコンのモニター上で組織を観察できるようになった.あの固体であるスライドガラスが,ネットワークを介してユビキタスに閲覧できるデジタルデータ(デジタル化標本)に変身したのである.こうなれば,このデジタルデータを生かすも殺すも,あとは利用する人間のアイデアにかかっている.つまり,どのような病理診断体制を構築すれば,このデジタル化標本を有効活用でき,質の高い病理診断を患者に提供できるかを考え,実行するかである.もちろん,バーチャルスライドは技術的にも緒に着いたところであり,種々の解決すべき問題も抱えている.しかし,そんなことは憂慮する間もなく,驚くべき早さで改良されていくことは,様々なIT分野で皆が実感しているところである.
そこで本稿では,このバーチャルスライドの存在を意識しながら,どのような病理診断体制を構築すれば,病理診断医数が絶対的に不足している状況下でも,質の高い病理診断を提供できるかを提案したい.目指すべき病理診断体制の青写真を示せば,自ずとデジタル化標本を利用した病理遠隔診断の姿が見えてくると思うし,逆に技術に併せた体制作りは意味をなさないと考えるからでもある.
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