元外科医のつぶやき・19
病理結果を踏まえて
中川 国利
1
1宮城県赤十字血液センター
pp.798
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200887
- 有料閲覧
- 文献概要
前立腺癌で手術を受けてから4カ月後の指定日に,切除標本の病理結果を聞きに外来を受診した.病理結果は,生命保険の診断書に記載されていたように,pT2c, pN0, cM0のstageⅡであった.泌尿器科の教授は,“術前は手術で取り切れるか心配でしたが,病理学的には問題ありませんでした.放射線療法ではなく,手術を行って正解でした.私も責任が果たせてホッとしました”と語った.一方で,“切除断端への浸潤はなく,リンパ節転移も認めませんが,病理学的にpT2cの中間リスクですので,再発する可能性はあります”と,執刀医の立場として付け加えることを忘れなかった.この姿勢は私自身も外科医時代にとってきたことであり,よしみを感じた.
“リンパ節はサンプリングですか”との問いに,教授は“いいえ,左右の内腸骨・外腸骨・閉鎖腔リンパ節の全てを郭清しました.実は開腹手術より腹腔鏡下手術のほうが的確に郭清することができます”と,自信の一端をのぞかせた.成書には,ロボット補助下手術や腹腔鏡下手術による拡大リンパ節郭清には限界があると記載されている.しかしながら,達人にとっては拡大視効果のため開腹手術より容易であり,元外科医の私自身も腹腔鏡下手術のほうが的確に行うことができた.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.