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花前線.まず思い浮かべるのは梅に桜.それに水仙と菜の花もいい.2ヵ月足らずで日本列島を駆け上がり,春を彩る.恵まれた日本の風物詩である.梅雨の頃には紫陽花と桔梗がお薦めである.あの清純な青紫は気だるい暑さと梅雨空を忘れさせ,気高い香りを放つ.夏は百日紅.熱い日差しがきても,物寂しい蝉の声が聞こえ始めても似合う.そして秋にはお返しに紅葉前線が駆け下る.列島を辿る彩りの日本地図,フラワーマップが出来上がる.追いかけたくなる花前線.旅先の花前線は,一瞬,時と場所を忘れる.感じては時を知り,感じては奮い起こし,感じてはヒトを想ってきた.飢えから解放された日本人の豊かな感性である.
人類の歴史は飢餓との戦いでもある.地球号に棲む人類60億の14%,8.3億人がいまなお飢えている.栄養不足人口をWFP(World Food Programme)はマップ化した.世界地図,ハンガーマップである.栄養不足人口が非常に高い35%以上の最重症国から,20から34%,5から19%,2.5から4%,そして極度に低い2.5%未満の国々を赤から黄,緑へと彩る.赤は20カ国以上あり,アフリカ大陸(スーダン,エチオピア,ソマリアなど)や中央アジア(アフガニスタンなど)に集中している.地域別の人口比率をみると,中国21%,インド25%,その他北朝鮮を含むアジア諸国が20%で,なんとアジアだけで2/3を占める.原因は,旱魃や洪水など自然災害もあるが,主な要因は複合的である.戦争,紛争,政治の貧困などの人為的要因の上に自然災害が加わり,飢餓が加速している.一方,ハンガーマップ緑の国,日本は,供給カロリー自給率42%にかかわらず,一日一人159gの食料を無駄に捨てている.結婚披露宴や宴会ばかりでなく,家庭ごみを思い起こしても納得がいく.そして,皮肉にも,過食,過体重,肥満に悩んでいる.
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