書評
―北風政史 編―心不全の診かた・考えかた
永井 良三
1
1東京大学大学院・循環器内科
pp.1062
発行日 2007年9月15日
Published Date 2007/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100895
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心不全は人類にとって重要な疾患である.いかなる疾患であれ,最終的な死因に心不全が必ず関与する.心不全は病名ではなく全身性の症候群である.単一の検査によって診断することは不可能であり,症状,身体所見,様々な検査所見を総合して診断する必要がある.また,概念も収縮障害,拡張障害,右心不全,左心不全など多様な視点から定義される.さらに心不全を来す基礎疾患が多彩である.それだけに臨床医にとって心不全症例を的確に診断し対処することは必ずしも容易でない.
心不全の病態生理は分子,細胞,器官,個体レベルで研究されており,その研究は長い歴史を持っている.その成果は疾患概念の進歩とともに,新たな診断・治療法に還元されている.かつての心不全の標準治療も現在では禁忌とされたり,逆に禁忌とされた治療が標準治療となっていたりする.これも病態研究の進歩によるものであるが,初学者には心不全に対する敷居の高さを生んでいる.
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