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“100年の夢”,北京オリンピックは中国による金メダル51個奪取にて終焉した.集中豪雨的なアウトカムである.そう言えば,今年の集中豪雨はすごい.激しい雷雨とともにやってきた.短い夏が猛烈に暑かった.その照り返しであろう.短時間のゲリラ豪雨,その中での落雷,鉄砲水に貴重な人命が奪われている.“袖濡れの夕立”などと洒落る雰囲気なぞ微塵もない.おどおどしい夏の終りである.地球温暖化の本格化かとふと心配したくなる.時に,亜熱帯なみのモンスーンみたいなやつが顔をみせるからであろう.ヒートアイランドが激しい上昇気流を生み,ゲリラ豪雨を頻発したのである.
医療界も例外なくゲリラ豪雨に曝されている.爾来早10年余が経過しようとしている.ようやくひとつのアウトカムが見えてきた.去る8月20日,2004年に発生した福島県立大野病院事件に対する福島地方裁判所の判決が出た.医師不足が著しい地域医療の現場で起きたこの事件は,「医療崩壊」の象徴として推移が注目されてきた.結局は,癒着胎盤という重篤な産科救急の現場で当該医師がとった医療対応は厳しく検証された結果,“妥当”との判断が下ったのである.むしろ,かかる合併症事故への刑事責任追及の在り方に批判が集中している.特に,捜査機関の安易な直接介入が問題視されることになった.これを契機として現在進められている医療事故の死因究明を目的とする中立的第三者機関の設立が加速されることになるであろう.そして何よりも学ぶべきは,このような不幸を未然に防止し,医療崩壊を助長させない日常活動の大切さである.医療専門家は常々不具合の真相は何にあるかを把握せねばならない.また効果的な再発防止策をチーム医療で取り組むべきである.医療安全管理活動などと空念仏を唱えることなく,リスク管理を徹底し,ゲリラ的な不測の不具合防止に集中することである.
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