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あとがき
和泉 徹
pp.984
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102059
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今回の特集は大震災と循環器・呼吸器疾患である.企画された下川先生の慧眼に敬服する.地震の直接的影響もあれば,事後の要因が大きく作用している疾患もある.予め十分な知識があれば予防効果が高い事例もあり,是非通読して頂きたい.
折しも,3.11東日本大震災における福島原発メルトダウンが国会事故調査委員会によって「人災」と結論付けられた.今回の放射能汚染が,「これまで何回も対策を打つ機会があったにもかかわらず,規制当局と東京電力がそれぞれ意図的な先送り,不作為,または,自己の組織に都合のよい判断を行い,安全対策がとられないまま,3.11を迎えた」と結論付けた.画期的な検証である.今まで曖昧な回答を好んだ国家的検証にはじめて明快な答えを導き出した.規制当局と東京電力の関係は,「規制する立場とされる立場に逆転が起き,原子力安全の監視・監督機能が崩壊していた」と断じた.そのうえで,「何度も事前に対策を立てるチャンスがあったことを鑑みれば,今回の事故は『自然災害』ではなく,『人災』である」と結論付けた.原子力行政の在り方を問い,東京電力の当事者能力を責め,国民の健康と安全を守る原子力委員会の設置を国家に求めている.日露戦争以後,国家的な事件に対し,歯切れのよい反省を躊躇してきた日本の国家検証委員会とは思えない.実に品格のある出来映えである.CTやMRIに依存する高エネルギー型医療に慣れ親しんだ現状をみると,代替えエネルギーが用意されるまで原子力に頼らざるを得ないであろう.しかし,リスク回避には格段の万全さが求められている.
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