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再び3月11日,3.11がやってくる.強烈な横揺れの後,波ではなく海が押し寄せてきた,地震と津波のあの日である.加えて,人類が嘗て経験したことのない放射能汚染が広まった歴史的な日でもある.それから丸一年を経た.その間,日本のみならず,アメリカもヨーロッパも激しく変わった.ここ10年におけるアメリカの凋落は甚だしい.政治的に,軍事的に,そして経済的に大幅な後退局面にある.円高の経緯が端的にそれを物語っている.世界の警察を自認し,アフガニスタンやイラク,イランなど中東に関わった代償は国を危うくした.特に,アフガニスタンへの介入は目を覆うばかりだ.紛争解決の目途も立たぬまま,2011年末で1万人の兵力が引き上げ,その6カ月先には3万3000人の全ての追加派兵が撤退する.決断したオバマ大統領をいろいろと責めてはいるが,かといって“ネジレ議会”の片方を担っている共和党がこの事態を惹起し,その上に強力な代替案を持っているわけでもない.片やヨーロッパも身動きがとれない.1ユーロは170円から97円になった.ECから変身したEUの輝きは完全に失せた.ドイツ・フランスのリーダーシップは小国の不具合に翻弄され続けている.
では日本はどうか? みてのとおりである.失われた10年は20年に拡大し,対立軸を失った安保体制は漫然と存続する.先の東北大震災に際しては半分の兵力を災害派遣に割いても無防備と判断しない国である.民主党であろうが,自民党であろうが増え続ける国民負担の在り様は変わらない.世界的な八方塞がり状態である.では,この潮流を打ち砕く勢力は育っているであろうか.BRICsは次の時代を築くか? それも不確定である.混沌とした状況下での地球規模の舵取りが求められている.そのなかで確かなものがひとつある.地球人口が70億を超え,しかもその10%が常時餓えている.明らかに食糧は有限である.人口増加には節制が欠かせない.しかし,その主張は貧する者には棘である.医療においても然りである.長寿社会は医療負担の大幅上昇を伴い,大量の医療資源を消費する.一国の消費が他国のバランスを崩しかねない.傷んだ東北500kmの復興をみる時,地球と次世代にやさしい国づくりのモデル事業として展開されることを切に希望する.
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