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CCU(冠動脈疾患集中治療室)の発展には実に学ぶべきことが多い.CCUは1962年に米国で初めて設置された.急性心筋梗塞の怖さは発症直後の不整脈死にある.強力な介入なしでは発症後2時間で約半数もの患者を失ってしまう.これがシステム造りの発端であった.24時間態勢で心電図や血圧をモニターし,電気不全による心肺危機に備えたのである.すると当然,急性心筋梗塞との診断が正しければ死亡率は約20%と激減し,またハイリスク患者も不整脈の種類から層別化された.Lown分類である.しかし当時の急性心筋梗塞との早期診断は危ういものであった.激しい胸痛を訴えた患者の20%が心電図診断できればよいほうであったという.ここでバイオマーカーによる補助診断が芽生え,1970年代に発達してきた.CCUの発達により不整脈死を予防できるようになると,初期から回復期に現れる機械的不全が課題となってきた.心エコー図やSwan-Ganzカテーテルの登場,Forrester分類,IABP治療,カテーテル治療,CABGである.1980年代の進歩である.この辺から急性心筋梗塞の対応が“待つ”から“予防的に攻める”に変容する.急性心筋梗塞がプラーク破裂・血栓形成によって発症することが知られると,CCUでの血栓溶解療法や急性心筋梗塞患者の直接PCIが盛んに行われるようになった.1990~2005年の15年間は基本的にこのシステム造りと器具改良,それに技術革新に明け暮れた.結局,STEMIなるカテゴリーが生まれ,ほとんどのCCUでの死亡率が10%に達したのはこの頃である.一方,この間にCCU活動が盛んになればなるほど慢性心不全患者を多量に生み出すジレンマがはっきりしてきた.高齢者では大半が5年以内に心不全に陥り,その半数が死亡する.高齢者における医療負担増大の一因になっている.この虚血性心不全患者の予防的介入が抗・逆リモデリング療法である.より早期の合理的な再灌流は最も効果的であり,薬物療法に裏打ちされた心臓リハビリがこの効果を高める.一次予防・早期介入・二次予防の地域連鎖が関心事となっている.
今回,横浜市立大学木村一雄教授は,このような観点を交えながら再灌流療法をめぐる諸問題に鋭く迫って頂いた.読者の期待に応える内容と讃えられる.プレホスピタル活動も含んだ幅広い話題提供である.
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