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あとがき
和泉 徹
pp.372
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100807
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ストレスには心地よいオイストレスと,精神や身体を蝕んでいくネガティブストレスとがある.良いストレスと悪いストレスとでも言えよう.心臓突然死や急性冠症候群,たこつぼ心筋症,高血圧などをトリガーするのは後者である.特に,歪みが加わったストレイン型が問題視される.ストレスは生活人生を通じて絶え間なく生まれるが,自己決定が多いとネガティブストレスは発生しにくい.例えば,仕事である.「うまくいかない」,「忙し過ぎる」,「予測や予定が外れた」などはネガティブストレスを招きやすい.医師は当にこのストレス下で苦闘している.特に,「はかどらず,時間ばかりが過ぎて行く」などはとてもやるせない.ストレスの渦中で存在が翻弄される.だが,多くの医師は,瞬間的な立ち直りが可能である.それは自己裁量が個々の局面で委ねられているからである.これが危うくなっている.否,見直されている.
今日のEBMでは,ランダム化臨床試験によってエビデンスの質が決まり,医療の標準化が推し進められる.質を表す指標が,勧告分類クラスI,II,III,エビデンスレベルA,B,Cである.クラスI・レベルA,すなわち手技または治療法が有益であり,有用で有効であることを示すエビデンスが複数のランダム化臨床試験,またはメタアナリシスから得られている事例などは数えるほどしかない.多くはクラスII・レベルCである.つまり,手技または治療法の有用性/有効性について専門医の一致した意見や症例研究がある事例,程度である.ペニシリンやニトログリセリンの効用レベルでさえこの範疇にとどまる.
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