Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
日常診療で気づかれずにいる心臓呼吸器疾患患者の存在が桁外れに多いことがわかってきている.慢性閉塞性肺疾患(COPD)を例に考えると,わが国では,Nippon COPD Epidemiological(NICE)studyの成績に基づいて500万人超のCOPD患者の存在が2001年に報告された1).これは,それまで基準にされていた厚生労働省の統計2)よりもはるかに多い罹患率であり,NICE studyによって行われた肺機能検査がこれまで気づかれずにいた患者を掘り起こした結果と考えられている.
肺機能検査は健常者を含めたあらゆる場合にわたってその能力を推定する最も基本的な生理検査の一つである.呼吸器疾患ではとりわけその重要性が大きい.近年相次いで発表された世界的な慢性呼吸器疾患の治療ガイドラインのなかでは,COPDのGOLD3)と気管支喘息のGINA4)が代表的である.両ガイドラインをみると,診断での肺機能検査の意義に加え,これらの疾患管理における定期的な肺機能検査が共通して強く推奨されている.
潜在患者の発見や心肺能力評価は呼吸器の専門家にとどまらず日常診療では大切なポイントの一つである.最近,小型で性能の良いスパイロメーターが手軽に安価で使えるようになってきた.簡単にしかも良好な精度で肺活量や1秒量を測定することが診察室のなかでも可能である.日常診療のなかで肺機能の客観的な評価を行うことは,より質の高い総合的な診療を求める時代の流れにも合致していると信ずる.
本小論では,最初にスパイロ測定指標の基礎的な確認事項を述べ,次いで,喫煙者のなかのCOPDの早期検知の臨床的意義を重視し,日常診療で最も危急の課題の一つであるとの立場から,COPDの場合を例にとって日常診療におけるスパイロメーターの活用を記述した.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.