今月の主題 大腸sm癌
主題症例をみて
大腸sm癌の病理学的特徴とその取り扱い
廣田 映五
1
1国立がんセンター研究所病理部
pp.857
発行日 1983年8月25日
Published Date 1983/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109441
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早期大腸癌のうちsm癌の病理学的にみた特徴像と,治療方針の決定および予後判定に役立つ病理学的因子は何かということが当面の問題である.近年経肛門的ないしは内視鏡的ポリペクトミーの普及によりsm癌の発見率は上昇傾向にある.ポリペクトミーの適応とその材料の組織学的な検索結果からsm癌と判定された症例の臨床的な取り扱いに対し,病理学的検索に携わる病理医の立場からいかに示唆に富む情報を臨床医に与えられるかということが重要である.
まず,肉眼形態別にみたsm癌の頻度は早期大腸癌を母数にしてどの程度であるかということを検討した.国立がんセンター開設以来1982年9月末までの約20年間に扱われた早期大腸癌は114症例138病巣である.このうち51病巣(36.9%)がsm癌であるが,肉眼形態別にみると,Ⅰ型早期大腸癌のうち有茎性のものをⅠpと亜分類したところ19.1%,つまり約8割はm癌であった.これに対し無茎性のⅠs型早期大腸癌では52.5%と過半数がsm癌であった.Ⅱa型では36.8%とやや低率であるが,Ⅱa+Ⅱc型となると91.0%と高率であった.これらの結果を参考にして,大きさ,部位,生検組織所見,患者の一般状態などを臨床的に綜合して,いかなる方法で処置するかを決定すべきであろう.
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