忘れられない患者・私の失敗例
多忙にまぎれて患者の訴えに気づかずに
渡辺 武
1
1渡辺内科医院
pp.1027
発行日 1976年7月10日
Published Date 1976/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206672
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「先生,どうもこの頃,左肩が張って,肋間神経痛でもおこしたのですかね.年ですかな」と10年来のひょろ長い患者さん(男,大正3年生まれ)が診察室に入ってきて,「まさか肺癌なんてことはないでしょうな.1年前,先生の所で体重測ったら40kg,先月は44kgで,食事もうまいし」と一気にしゃべり出した.それは昭和49年5月のこと.
この患者さんは生命保険会社の事務職員で,39年3月,腎出血を主訴としてこられたのが始まりで,大学病院に紹介,特発性のものといわれ,その後胃炎・胆のう炎などでほとんど毎月1回以上はおつき合いしている間柄.その奥さんも肝炎で,おばあちゃんは高血圧で,一人娘の可愛いまち子ちゃんは時々感冒でと,一家のことは部屋数,畳の数までよく知っている.
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