“ホッ”とspot
Münchhausen症候群
大居 慎治
1
1松江赤十字病院内科
pp.255
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904069
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Münchhausenとはドイツのお伽話に出てくるほら吹き男爵の名前である.派手な急性症状をくり返して治療を受けるが,訴えは虚偽やわざとらしさがあったり,検体に手を加えたり,時には自傷行為や異物を摂取するなどし,医療者とトラブルを起こすようなことをさしてMünchhausen症候群という.
私の経験した患者は56歳の女性で,歯肉出血,皮下出血を主訴に来院した.もともと低体重出生児で歩行開始は3歳,精神発達遅延もあった.約10年前に糖尿病と診断され,通院治療を受けている.小児期にはよく皮下出血があったらしい.約10年前にも凝固時間の延長があり入院したが,原因不明であった.数年前,意識障害で救急外来を受診したが,何の異常もなく,つまりは“死んだふり”であった.義歯を飲み込んだこともあった.ただ,今回はプロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間とも著しく延長しており,糖尿病の主治医は今回は本当の病気かも知れないと語った.家族歴でも9人の兄弟のうち2人が生後まもなく死亡しており,両親と父方の祖父母の2代にわたり,いとこ同士の結婚であったから,何となく先天性の疾患を思わせた.
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