増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第4集
免疫血清検査
63.Paul-Bunnel反応とEpstein-Barrウイルス抗体
浅川 英男
1
1東京理科大学・薬学部
pp.1774-1775
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222752
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伝染性単核症(IM)はEBウイルス(Epstein & Barr,1965)によって引き起こされる疾患で,発熱,咽頭痛,扁桃炎,全身のリンパ節腫脹,肝・脾腫,肝機能障害,特有の異型リンパ球(Downy細胞)が出現する.このとき日本では大多数において患者血清はヒツジ赤血球を凝集し,しかもこのとき患者血清をモルモット腎抽出液で吸収しても,ヒツジ赤血球の凝集素価は変わらない.この異好抗体の一種であるPaul-Bunnel(P-B抗体)は,IMの重要な診断根拠であるが,日本人では本抗体は上昇しない.したがって,日本人のIMの診断は異型リンパ球(Downy細胞)の証明が重要となる.日本人のIMでP-B抗体価の上昇しない理由はおそらく免疫応答遺伝子の問題と考えられるが,明瞭ではない.日本人のIMの診断には,その他,EBウイルスのIgM抗体価の上昇が重要な診断根拠となる.
表1に異好抗体であるForssman,P-B,H-Dの3種類の抗体のヒツジ赤血球,ウシ赤血球,モルモット腎抽出液の反応態度を示した.モルモット腎抽出液はForssman,H-D抗体とは反応するが,P-B抗体とは反応しない.これを用いたのがP-B抗体証明のためのDavidsohnの吸収試験である.すなわち,P-B抗体はモルモット腎抽出液では吸収されない性質を持っていることで,Forssman抗体やH-D抗体と区別される.
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