カラーグラフ 臨床医のための甲状腺生検
未分化癌の細胞診所見(2)—小細胞癌
藤本 吉秀
1
,
小原 孝男
3
,
平山 章
2
Yoshihide Fujimoto
1
,
Takao Obara
3
,
Akira Hirayama
2
1東京女子医科大学・内分泌外科
2東京女子医科大学病院病理科
3東京女子医科大学
pp.964-965
発行日 1983年6月10日
Published Date 1983/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218313
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甲状腺未分化癌のうち,クロマチンに富む核を有し,細胞質の少ない小型の腫瘍細胞が充実性に増殖するものを小細胞癌と呼ぶ.当然,組織学的に悪性リンパ腫との鑑別が問題となるが,光顕的に次のような所見が小細胞癌を示唆するものとされている.すなわち,上皮様構造を有すること,多形性に富むこと,線維性結合織に囲まれた充実性増殖を示すこと,転移リンパ節にリンパ濾胞や胚中心が残存すること,などである.実際には鑑別が非常に難かしく,小細胞癌の確定診断のためには,電顕的に腫瘍細胞のhemidesmosomeを証明する必要がある.
臨床的には,小細胞癌も巨細胞癌と同じく急激に増大し,隣接臓器に浸潤性に増殖するため各種の症状を伴う.小細胞癌は巨細胞癌と異なって分化癌と同程度に女性に好発し,腺腫や分化癌からの移行が少ない.また,治療面でも多くの巨細胞癌と違って,放射線外照射療法や化学療法に著効を示すものがあり,長期生存の期待ができる場合が少なくない.このような臨床像は悪性リンパ腫にも共通している.
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