カラーグラフ 臨床医のための甲状腺生検
乳頭癌の細胞診所見(2)
藤本 吉秀
1
,
小原 孝男
1
,
平山 章
2
Yoshihide Fujimoto
1
,
Takao Obara
1
,
Akira Hirayama
2
1東京女子医科大学・内分泌外科
2東京女子医科大学・病院病理科
pp.426-427
発行日 1983年3月10日
Published Date 1983/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218190
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前月号の症例に示したように,甲状腺穿刺吸引細胞診で乳頭癌の診断をつけるための指標となる所見の一つとして,まず乳頭状の増殖形態をそのまま示す細胞集団の存在をあげることができる(図1).乳頭状の細胞集団の外縁は比較的滑らかで,外に向って凸の弧を描く.内部では細胞が密集重積し,細胞間境界は明瞭でない.核は円形または長円形を呈し,強拡大で検鏡すると核の大小不同が認められる(図2).乳頭状細胞集団は良性結節の細胞診でもみられるが,それらでは細胞の密集重積が少なく,細胞間境界が明瞭で,核の大小不同がない.また,次に述べる乳頭癌に特徴的なその他の所見を欠く.これらのことから鑑別は難しくない.
もう一つの特徴的な指標は,細網状のクロマチン分布,著明な核小体,ならびに核内封入体判定が容易であり,指標とするのに都合がよい.核内封入体は電子顕微鏡所見によると,細胞質が核内に陥入して生じたものである.この所見は濾胞癌の一部にも認められるが,乳頭癌に出現する頻度がはるかに高い.
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