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予後学の確立を
川上 武
1
1杉並組合病院内科
pp.1014-1015
発行日 1971年6月10日
Published Date 1971/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203708
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軽視されつづけてきた"予後学"
現在,医学界の一部に予後学の確立を志向する動きが強まっている.いままで,人間の寿命,疾病の予後に深い関心をもってきたのは,医学界というよりむしろ生命保険会社であった.だが,そこで問題になるのは,結局は企業の利潤追求に必要な,生命保険加入者の平均余命の測定にすぎない.それが,いわゆる予後学の一部分になるとしても,最初から限界があるのは言うまでもない.
いま,予後学の確立を望む声のうちには,予後学的発想をテコとして,医学研究・医療技術の再検討,転換をはかろうとする意図が含まれているのが注目に値する.従来でも,内科学に予後,予後学という言葉がなかったわけではない.ただ,その扱い方が,症候→診断→治療→予後といった形式化された医療の流れのなかで,不当に軽視されてきた.内科学の講義,教科書でも言及することが最も少ない部分であろう.
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