図解対症検査 消化器シリーズ・2
上腹部痛(その1)—急激な痛み
石井 兼央
1
1国立がんセンター血清部・内科
pp.1020-1023
発行日 1971年6月10日
Published Date 1971/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203709
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
腹痛の発生機序(図1)
腹痛は腹部臓器を支配する神経系から大きく体性痛somatic pain,内臓痛visceral pain,関連痛referred painあるいは放散痛radiating pain,の3つに分けられる.
体性神経は脊髄神経の末梢神経で腹腔内では腹膜,腸間膜,横隔膜にその知覚神経終末が豊富である.したがってこれらの臓器への刺激が激しい痛みを起こすことはよく知られている.内臓痛は内臓神経(自律神経)を介して起こるのであるが,これは交感神経のなかに自律神経とは異なる求心性知覚神経がふくまれているためであり,血管外壁,胃,十二指腸,小腸,結腸,胆嚢,膵臓などにその神経終末がみいだされている.管腔臓器では臓器の拡張,伸展,牽引に対してその知覚神経終末が敏感に反応する.またこれらの臓器の変化が高度であり腹膜,腸間膜,横隔膜などをも刺激すると体性痛も加わり腹痛は激烈になってくる.体性痛や内臓痛が脊髄に入り,その刺激が同一の脊髄節に属する他の部位に反射して起こる痛みが,関連痛あるいは放散痛である.
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.