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編集室より
Y
pp.916
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105200
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●東日本大震災から1カ月.余震は続き,原子力発電所の事故処理は先が見えません.長期滞在を余儀なくされている避難所で,喫煙や飲酒の是非が取り沙汰されました.つい「度を過ぎなければよいのでは……」と弱気になってしまった私に,「非常時だからこそ,依存性のある薬物はやめるべき」と断言した方は,「その人のために心を鬼にするのが優しさだ」と仰いました.たしかに,正論です.でも,諭されて実行できるくらいなら,そもそも喫煙や飲酒という「わかっちゃいるけど,やめられない」状態には陥らないだろうなぁという違和感も拭えないのです.●一昔前の患者教育では「正しい知識が行動変容を導く」とされていましたが,一筋縄ではいかないのが現実です.本特集のテーマである脂質異常症診療は,「将来起こりうる動脈硬化性疾患」というリスクを患者が納得して治療を続けられるかが鍵となります.「リスクがある」と聞かされても,「すぐ死ぬわけではない」と否認し,喫煙や飲酒を「いざとなれば止められる」と高を括り,「人はいずれ死ぬ」と諦める態度を示す患者にどう接したらよいか.正解はないからこそ,内科医の腕の見せ所ではないでしょうか.●未曾有の大震災の余波は,各地の診療現場にも襲いかかりました.そのような状況にもかかわらず,お原稿を書き上げてくださった先生方に,この場を借りて御礼申し上げます.編集室にできることは,ご提供いただいた叡智を心待ちにしてくださる読者の皆様へお届けすることです.どうぞ日常診療にお役立ていただければ幸いです.
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