特集 死因究明制度の現状と将来展望
日本の死因究明制度の課題—法学者の立場から
福島 至
1,2
1龍谷大学法科大学院
2龍谷大学矯正・保護総合センター
pp.316-320
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208179
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はじめに—法律家の関わり
1.法律家と死因究明
人が亡くなった原因が何であるのかについては,以前からも,裁判所において最終的に決定されることがらではあった.民事訴訟においてと,刑事訴訟においてと,である.
a) 民事訴訟は,基本的に私人間の争いに関する訴訟である.例えば,医療過誤を理由に遺族が損害賠償を求める訴えを起こした場合で,その中で死因が問題となりうる.
b) 刑事訴訟は,国家機関である検察官が,被告人に対して刑罰を科すよう求める訴訟である.例えば,検察官が殺人罪で公訴提起した場合で,その中で死因が問題となりうる.
しかしながら,訴訟を通じての死因究明には,大きな限界や制約がある.第一は,責任追及のための訴えや公訴が提起されなければ,始まらないことである.そもそも,遺族や検察官が,死因に不審を抱くことがなければ訴訟にはならない.第二に,訴訟には大きなハードルが存在する.特に民事訴訟では,時間や労力,資金などの点で大きな壁がある.いずれの訴訟にせよ,死亡直後の初期段階で,必要な情報収集(解剖など)が行われていないことも,訴訟を提起しにくくしている原因である.
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