特集 死因究明制度の現状と将来展望
欧米の死因究明制度の歩みと現状—日本との比較
白鳥 彩子
1
,
藤宮 龍也
1
1山口大学大学院医学系研究科 法医・生体侵襲解析医学分野
pp.311-315
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208177
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死因究明制度は国によって様々であるが,欧米諸国においては2種類に大別される.一方は,死因究明そのものを目的とし,明らかとなった死因等の情報が同様の死の再発予防や公衆衛生向上,犯罪捜査等に活用される英米法系,もう一方は,犯罪死見逃し防止が目的の中心となり,検死に警察が関与する大陸法系である.わが国の死因究明制度では,司法解剖制度はドイツを,また監察医制度はアメリカ合衆国のメディカル・イグザミナー制度を起源とするため,英米法系と大陸法系の制度が併存し,さらに,体系的でないため責任主体が不明瞭となっている1〜6).また,法医解剖は死因決定に関わる重要な業務であるが,その実施や死因の決定に関して,欧米諸国と日本では異なる部分が多い.欧州では,EU統合に際する各国の死因究明制度の違いによる混乱を避けるため,1999年のEU欧州評議会による勧告1)で法医解剖の対象が明確にされた(表1).これらは日本の異状死体に相当するが,法医解剖に先立って犯罪死体や変死体と判断されることなく,unnatural deathとして死因究明が進められることになる(本稿では,便宜上届け出るべき死体はすべて異状死体と呼ぶ).
本稿では,世界で最も有名で,かつ最も民主的といわれるコロナー制度を中心に,日本の死因究明制度に影響を与えたドイツおよびメディカル・イグザミナー制度の他,特に法医解剖の実施率の高いスウェーデンやフィンランドの死因究明制度について解説し,わが国の死因究明のあり方について考察する.なお,各国の死因究明制度の実施概要および解剖実施状況については,表2および表3を参考にされたい7).
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