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わが国はこれから未曾有の多死社会を迎え,死因究明制度の確立が必須となっている.犯罪の見逃しという観点で語られているが,わが国の死因統計で1994〜1995年にかけて死亡診断書・死体検案書の書式改訂に伴って心疾患が30%減少し,肺炎が20%減少,脳血管疾患が20%増加した事実に目を背けることなく,死因診断の向上を図る必要がある1).他論文でも記述されているように,2012年6月に死因究明関連二法が成立した.一つは「死因究明等の推進に関する法律」(死因究明等推進法),もう一つは「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」(死因・身元調査法)であった.死因究明等推進法に基づき,内閣府に官房長官を長とする死因究明等推進会議が設置され,その下部組織として死因究明等推進計画検討会が設置されて18回の議論を重ねた.その結果策定されたのが「死因究明等推進計画」(2014年6月13日閣議決定)である2).この中で,当面の重点施策として,新たに決まったものとして下記のものがある.
●政府における施策の管理・調整体制を構築し,施策を検証・評価・監視
●地方に対する関係機関・団体からなる協議会の設置の要請
●協議会等での検討結果を踏まえた地方の実情に応じた体制整備の要請
●警察官,海上保安官に対する研修等の充実
●5年後を目途に,専門的研修を修了した医師が警察等への立会い・検案を実施できるよう,検案に携わる医師の充実及び技術向上
●小児死亡例に対する死亡時画像診断の情報の収集・分析・検証
●検案に際して必要な検査・解剖を明らかにするための研究の推進
単純に読みとると,地方の実情に応じて新しい体制を取ること,その体制については研修および技術向上をはかること,画像診断情報の解析や検案に必要な検査・解剖を明らかにするための研究を推進する計画を策定することが書かれている.したがって,各地方において死因究明に関する教育の充実と研究を図る必要があるということになる.
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