連載 図説 公衆衛生・12
結核の現状と課題
安西 定
1
,
高原 亮治
2
,
川口 毅
3
1国立循環器病センター・運営部
2厚生省保険局医療課
3栃木県・保健予防課
pp.811-814
発行日 1977年12月15日
Published Date 1977/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205517
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わが国の結核の死亡率は,昭和25年まで死因順位の第1位を占めていたが,ストレプトマイシン,パス,ヒドラジッド等抗結核剤の開発,保健所を中心に展開された結核対策の推進,ならびに国民の生活水準の向上などによって急速に低下し,昭和51年には,結核死亡数は全国で9,571人,死亡率は人口10万対8.5で,死亡順位は全疾患中第10位となっている.このままでいけば,わが国の結核問題は解決されたかのようにみえるが,抗生剤耐性菌,薬剤の副作用,結核患者の老齢化など新たな問題が出現し,結核の死亡率,罹患率ともに減少の程度は,やや鈍化の傾向を示している.一般に結核死亡率は,当該国の公衆衛生水準をあらわす指標として示されるが,オランダ,アメリカなど先進諸国の結核死亡率と比較すると,わが国の死亡率はいまだ高率であり,やっと中進国なみになった程度である.
また結核医療費は,昭和49年の推計では,2,122億円で,国民総医療費の3.9%に当たり,わが国においてはまだまだ結核対策は未解決の問題といえる.
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