連載 図説 公衆衛生・14
生活環境改善の現状と課題
安西 定
1
,
高原 亮治
2
,
川口 毅
3
1国立循環器病センター・運営部
2厚生省保険局医療課
3栃木県・保健予防課
pp.69-72
発行日 1978年2月15日
Published Date 1978/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205551
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公衆衛生がその産声をあげたころ,「公衆衛生」と「環境衛生」とは同義語として考えられていた.当時,健康上の主要な問題であった伝染病は,まったくのところ,不潔な環境の産物にほかならず,われわれの諸先輩は環境を改善することにより,伝染病の予防に成功し,"衛生革命"と呼ばれる輝かしい成果をうちたてた.
その後,医学や隣接諸科学の発展により,公衆衛生の意味する内容は,広範でかつ包括的なものへと発展した.そして環境衛生は,公衆衛生の重要ではあるにせよ一部分に過ぎない,と無意識的にではあれ考えられがちになった.しかし,公衆衛生の本質は,健康現象を中心として環境系のなかでそれを包括的に把握することにあるのであって,環境衛生の本質的な重要性がいささかも変化したわけではない.そればかりか,端的には公害による健康被害が示すように,複雑かつ高度な工業化の絶えざる進展に伴って,傷病構造は大きく変化しており,新しい時代に即応した環境衛生学の発展と,それに基礎づけられた環境衛生改善活動の充実とが期待されている.
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