連載 図説 公衆衛生・13
老人保健の現状と課題
安西 定
1
,
高原 亮治
2
,
川口 毅
3
1国立循環器病センター・運営部
2厚生省保険局医療課
3栃木県・保健予防課
pp.1-4
発行日 1978年1月15日
Published Date 1978/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205537
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わが国の老人福祉対策が行政上本格的に取り組まれたのは,昭和38年の老人福祉法の制定によるものである.それ以前にも,厚生年金保険や国民年金の老齢年金給付や生活保護法による養老施設への収容等があったが,老人福祉対策が体系的に実施されるようになったのは昭和38年以降のことである.
昭和38年の老人福祉法の基本的理念は,「老人は多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され,かつ健全で安らかな生活を保障されるもの」であり,老人がいわゆる健康で快適な生活を送る権利を有することを認め,その責任を本人と国および地方自治体にあることを明確に示したものである.さらに,具体的な福祉事業を,①健康診査,②老人医療費の支給,③老人ホームへの収容,④老人家庭奉仕員による世話,⑤老人クラブ等の設置促進,などを打ち出したもので,以後,日本経済の高度成長に伴って老人福祉制度も急速に拡充強化され,昭和47年には70歳以上の老人医療費の無料化制度が全国的にスタートし,一部の地方自治体では所得制限の徹廃や対象年齢の引き下げなどが実施され,老人福祉対策が大きく前進した.しかし,その後オイルショックに端を発した世界的な経済不況は,わが国にも深刻なインフレ状態をもたらし,老人福祉対策の見直し論が一部にささやかれている今日である.
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