連載 図説 公衆衛生・18
伝染病対策の現状と課題
安西 定
1
,
柳川 洋
2
,
高原 亮治
3
,
川口 毅
4
1国立循環器病センター運営部
2自治医科大学公衆衛生学教室
3厚生省保険局医療課
4栃木県保健予防課
pp.349-352
発行日 1978年6月15日
Published Date 1978/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205613
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わが国の公衆衛生行政が伝染病対策,とくにコレラ防疫対策に端を発していることはよく知られているが,戦後,医学,医療,薬学,公衆衛生の進歩により,コレラをはじめとする各種の伝染病は急激に減少した.伝染病の罹患率や死亡率は,従来から地域における公衆衛生水準をよく反映するものとして,一つの健康指標に用いられてきた.しかし,個々の伝染病別にはインフルエンザや,ある種の溶連菌感染症のように,開発途上国よりも開発国に,あるいは農山村部よりも都市部の方において罹患率が高い疾病もあり,また伝染病届出システムがどの程度完備しているかによっても,把握される程度に差があり,地域の公衆衛生水準の測定に利用するためには,慎重な検討が必要である.
伝染病が流行するためには感染源,感染経路,感受性の3要因がそろっていることが必要条件である.最近,新聞・テレビで報道されている川崎の河川で発見されたコレラ菌騒動も,コレラ菌が人の口に入るまでの感染経路やコレラ菌の病源性,ならびにコレラ菌に対する人の感受性などの条件がそろわなければ必ずしも流行に結びつかないことを物語っている.このほか,最近話題になっている伝染病のラッサ熱やマールブルグ病などのように,アフリカの一部の地域の伝染病が交通網の発達や輪人動物などにより,免疫を全くもっていない開発国にもちこまれ,死亡者を出した例があげられるが,にのことは今後,国際的視野に立った伝染病対策が必要なことを教えている.
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