特集 公害・環境問題の変貌と新展開
環境化学物質の次世代影響―出生コーホート研究による成果と今後の課題
岸 玲子
1
1北海道大学環境健康科学研究教育センター
pp.547-552
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401103074
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次世代影響が注目される背景
環境化学物質が子どもの健康に与える影響,とりわけ胎児期曝露の影響に世界的な関心が高まっている.その背景として,1996年発刊のColbornらによる「奪われし未来(Our Stolen Future)」で,環境化学物質による内分泌かく乱作用は胎児期が最も感受性が高いことが指摘されたことが挙げられる.翌1997年にはG8環境大臣会合において子どもの環境保健は最優先事項であるとされ,種々の対策の実施が緊急の課題として「マイアミ宣言」が採択された.
一方,医学的には“疾病の胎児期起源説(Fetal origins hypothesis)”が近年,提唱されている.胎児期の低栄養などによって成人期の循環器疾患やⅡ型糖尿病などに罹患しやすくなるとされ,その理由は飢餓など過酷な環境に適応する形で胎児が「倹約型」体質にプログラミングされ,それが小児期以降の肥満や成人期疾患につながるという仮説が出された.この考え方はその後,「Developmental Origins of Health and Diseases(DOHaD)」として生涯を通じたライフコースアプローチに関心が向けられるようになった1).
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