特集 公害・環境問題の変貌と新展開
放射性物質の環境動態に関する知見整理とその活用
古米 弘明
1
1東京大学大学院工学系研究科附属水環境制御研究センター
pp.541-546
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401103073
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
「平成23年(2011年)3月11日東北地方太平洋沖地震」に伴い,東京電力福島第一原子力発電所から多量の放射性物質が環境中に放出され,大気中を移動しながら乾性降下物や湿性降下物として地上に沈着した.環境中の放射性物質の挙動は,モニタリング調査によっておおよそ把握できるものの,ホットスポットと呼ばれる高放射線が検出される場所も存在し,環境や人体へのリスク管理を考えた場合,放出された放射性物質の環境中での移動と消長を明らかにする必要がある.
また,放出後の汚染実態の把握や効率的な除染の検討だけでなく,市街地や農地などで除染が実施されたあとの物理的な減衰と風雨などによる減衰などを併せて評価することも重要である.特に,降雨に伴う放射性物質の流出や移動,環境中での消長を反映しているモニタリング結果を解釈できるように体系立てて科学的知見を整理することが求められる.1979年スリーマイル島原子力発電所事故,1986年チェルノブイリ原子力発電所事故で放出された放射性物質の動態に関する研究成果は参考になるものの,森林が多く,急峻な地形が多いわが国とでは,環境中の挙動が異なるものと考えられる.
そこで本稿において,平成24(2012)年度環境省環境研究総合推進費により実施した,研究課題(ZRFb-12T1)「流域に沈着した放射性物質の移動と消長に関する文献調査及び知見整理」の研究成果を紹介させていただく.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.