特集 公害・環境問題の変貌と新展開
電磁界の健康影響評価に関する研究成果と課題
山口 直人
1
1東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第二講座
pp.553-557
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401103075
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はじめに
電界と磁界を合わせて電磁界という.電界と磁界が交互に発生しながら空間を伝播してゆく場合は電磁波とも称される.X線,ガンマ線など周波数3,000THz(テラヘルツ)以上の電磁波は電離放射線,それ以下の周波数の電磁波は非電離放射線に分類される.本稿で取り上げるのは,非電離放射線の中で,電力設備,家電製品が発生源である超低周波電磁界,携帯電話が利用するラジオ波電磁界である.
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer;IARC)は,2002年には超低周波電磁界について,2011年にはラジオ波電磁界について発がん性評価の結果を公表したが,いずれもグループ2B,すなわち,「人に対して発がん性を有する可能性がある(possibly carcinogenic humans)」という総合評価であった.発がん性評価の基となった研究は,疫学研究,動物実験,培養細胞等を用いた生物学的研究など多岐にわたるが,特に,疫学研究において「限定的な証拠(limited evidence)」が得られていると判断されたことが,総合評価に大きく影響したと考えられる.そこで,疫学研究の成果に焦点を当てて,最近の動向と課題について報告する.
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