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Key Questions
Q1:社会の医療との違いとは?
Q2:制度,制約の中で作業療法士ができることは?
Q3:医療刑務所に作業療法士は必要か?
はじめに
筆者らが勤務する東日本成人矯正医療センターは,法務省矯正局管轄の刑務所でありながら,同時に医療法上の病院指定を受けた医療専門の刑務所(以下,医療刑務所)である.診療科は内科,外科,精神科等12科あり,患者は主に東日本の刑事施設から移送されてくる.作業療法士は常勤2名,非常勤1名で身体障害領域と精神障害領域のリハビリテーションを担っている.
病気やけがにより身体や脳に障害を負うと,一般社会の医療施設(以下,社会の医療)では,多職種が連携して社会復帰に向けた支援を行う.当医療刑務所も定められた法律に基づき,一般社会の水準に照らした医療の提供を行い,被収容者の社会復帰を目指している.
当医療刑務所の身体障害領域のリハビリテーションでは,理学療法士が先駆的な役割を果たし,次いで作業療法士の介入が始まった.社会の医療と同じで,対象疾患は脳血管障害,内部疾患,整形外科疾患,廃用症候群等であり,医師の指示下に理学療法や作業療法が処方され,患者の安静度によって居室もしくはリハビリテーション室で行われる.リハビリテーション室内には,運動機器や福祉用具,評価スケール等,医療・福祉のリハビリテーションで提供される環境が整備されている.一方で,被収容者は刑の執行を前提に行動の自由が制限されているため,社会の医療と比較するとさまざまなギャップが存在している.
本稿は,事例を通じて医療刑務所での身体障害領域の作業療法士の課題や今後のあり方について報告していきたい.転帰は,①治療によって軽快し,移送元の一般刑務所に還送する,②治療中で刑期満了し,社会の病院に入院患者としてつなげる,③刑期満了で退院し,施設や在宅へ復帰するといった,3つのパターンがある.今回は,③在宅復帰した事例の取り組みを以下に紹介する.

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