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はじめに
片麻痺患者のリハビリテーションプログラムの多くは,主に歩行訓練に向けられ,上肢に対しては,形式的なプーリーによる単なる他動運動等が行なわれているにすぎず,ことに麻痺手に対する理学療法士の関心はあまり強くないように思われる。確かに,上肢の機能は,単に体重を支持するという下肢より複雑で,手指が日常生活に使用できないかぎり,粗大な連合運動(synergic movement)があっても実用性はない。したがって人によっては,極端に片麻痺上肢はなおるものは自然になおるし,なおらないものは放置してよいといった意見を述べるものすらいる。統計的には,約半数以上の症例は用廃手にとどまるといわれているが1)この中には,自然放置や,消極的なプログラムによって,回復の潜在能力を残したままや,また,引続いて当然の結果として合併する二次的退行変化の影響のために,眠ったままともいうべき用廃手がないものとは断言できない。片麻痺上肢の機能回復のための積極的な治療手段として,作業療法(以下OTと略す)が理学療法と併用された場合,その効果にはみるべきものがある2)。また,OTが担当する片手動作によるself-careのADL訓練,さらに,家事動作,自助具(self-help devices)の評価および訓練は,機能回復とならんで重要なプログラムである。
OTは理学療法と密接に関連して,段階を追って早期からプログラムを開始して,はじめて効果がある。特に最近発達してきた神経生理学的なアプローチを,最も自然に応用できる有利性があるので,OTを単なるPTの後で行なう巧緻動作訓練と考え,手指の回復がよほど良くないかぎり,OTの適態がないと考えるものがあれば,大きな誤りである。
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