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Key Questions
Q1:主に家庭環境や養育環境により問題行動を呈した児童思春期患者に対して,作業療法士としてどのような治療的かかわりをもてるか?
Q2:退院後の地域での安定した生活に向けて,作業療法士としてどのような介入ができるか?
Q3:児童思春期入院患者に対する多職種連携における作業療法士の役割とは?
はじめに
当院では3病棟ある精神科救急急性期医療入院料病棟のうち,主に1病棟で児童思春期患者の入院対応をしている.成人患者と同様に入院治療を受けており,可能な限り3カ月以内での退院を目指している.児童思春期精神科医療,とりわけその入院治療は,多くの職種のスタッフによる共同作業以外には成り立たない世界である,と報告されている1).当院では,医師,看護師,精神保健福祉士,心理士,薬剤師,栄養士,作業療法士等,多職種で連携して治療を行っている.
児童思春期入院患者が抱えるさまざまな課題のうち,集中力や注意力の欠如等の認知機能面の課題,意欲の低下や活動経験の乏しさといった活動面の課題,気持ちや考えの適切な表出が難しく感情コントロールが苦手,適切な対人距離を保つことが難しい等の対人交流面や社会性の課題は,作業療法活動を通して介入することが可能である.児童思春期患者の具体的な活動プログラムの週間スケジュールを表 1に示す.児童プログラムと児童心理教育は,児童思春期入院患者のみを対象とした作業療法活動であり,その他の活動は成人患者と共に参加する形式をとっている.児童プログラムではゲームや運動を通して,同世代間の摩擦や葛藤,さまざまな感情を通して,対人交流面の発達を促す.また,集団遊びを通して規則を意識し,仲間と自然な交流を図ることで仲間集団の発達を促す.一方,成人と共に参加する作業療法活動は,急性期では安心安全の保障や基本的生活リズムの回復等の役割を担い,回復期前期になると楽しむ体験や認知機能/作業能力の維持向上,自己肯定感を高めることを目的としている2).また,児童思春期患者は成人患者との交流を通して集団を意識し,成人のさまざまな考え方や価値観に触れる機会となる.
当院では2023年度(令和5年度)に児童思春期委員会が発足し,多職種で治療内容を検討している.加えて,週に1回,児童思春期入院患者一人ひとりについて主治医,担当看護師,担当精神保健福祉士,心理士,薬剤師,作業療法士による多職種カンファレンスを実施し,治療状況や現在の課題,退院に向けた支援内容について情報を共有,検討している.また,児童相談所が関与している患児については,週に1回,多職種で情報提供書を作成し,入院中の様子や治療状況を共有している.さらに,児童相談所や児童養護施設,学校等の関係機関と入院後に情報共有や治療方針を検討するためのカンファレンスを開催し,関係機関と入院時の様子や今後の方針,支援方法等を共有し,退院支援の一助としている.
今回,家庭環境や養育環境,発達特性等により問題行動を呈した事例を担当し,作業療法介入に加え関係機関との連携にも携わり,児童自立支援施設への退院支援を,多職種,関係機関と共に行ったのでここに報告する.ただし,個人情報保護のため,実例を基に一部再構成して報告する.

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