増刊号 周術期管理マニュアル—保存版
Ⅱ併存症をもつ患者の評価とその術前・術後管理
呼吸器疾患
慢性閉塞性肺疾患
津島 健司
1
Kenji TSUSHIMA
1
1東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科
pp.53-55
発行日 2025年10月22日
Published Date 2025/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800110053
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慢性閉塞性肺疾患の病態
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,たばこの煙を主要因とする有害物質を長期に吸入曝露することで気管支や肺胞がダメージを受け,呼吸障害をきたした病態のことである.呼吸機能検査では気流制限を示し,気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる1).
閉塞性換気障害の程度を判断するときには,肺活量の少ない患者において,1秒率は過大評価となる可能性があり,1秒量も評価する必要がある.1秒量が1,000 mLを下回る場合には高リスク群に相当し,動脈血液ガス分析を行う.動脈血液ガスは必ずしも重症度とは相関しないことがあるが,重要な指標となる.PaO2<70 torrあるいはPaCO2>45 torrでは要注意であり,中枢の呼吸応答が酸素濃度に対してドライブになっているため,高濃度の酸素吸入はCO2ナルコーシスを起こす危険性がある.PaO2<60 torr以下の低酸素血症では肺高血圧の合併頻度が高く,高二酸化炭素ガス血症が加わると肺動脈圧はさらに上昇する.高リスク群で,上記のような低酸素血症ないしは高二酸化炭素血症を呈する場合には,全身麻酔を回避し,局所麻酔での施行が可能かの検討を行うべきである.特に,高二酸化炭素血症をきたしている場合には,肺胞低換気状態であるため,術後の抜管困難をきたす可能性がある.区域麻酔で行える手術であれば全身麻酔を避けることも検討する.

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