ベクトル心電図講座・10
慢性閉塞性肺疾患
石川 恭三
1
1杏林大内科
pp.1324-1330
発行日 1974年10月10日
Published Date 1974/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205623
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人の平均寿命の延長,ならびに深刻化する大気汚染に伴い,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive lung disease:COLD)の発生頻度は年とともに増加する傾向にあります.従来からCOLDにおいては,慢性的に右室に負荷がかかっていることから,心電図上他の右室負荷群,たとえば僧帽弁狭窄症などと同じ判定基準に従って診断されてきましたが,その診断率は決して満足するものではないことが,多くの系統的な研究で実証されています.そこで最近では,COLDの心電図は,他の右室負荷群とは全く別個の判定基準に基づいて診断されるべきとする傾向が強くなってきています.
成人でみられる右室肥大の心電図は,すでに右室肥大の項で述べたように,生理的な左室優勢を,本来は弱少勢力である右室がその勢力を増して切り崩しをかけている状態を反映しているわけですが,なかなか優勢な左室勢力を凌駕することができず,先天性心疾患でみるような典型的な右室肥大像はむしろ稀にしか見られないことが多いようです.COLDは確かに右室肥大を惹起する条件を有しているわけですが,それ以外に心電図波形を大きく修飾する因子が介在していて,多種多様の波形を作り出しています.
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