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あとがき
板野 理
pp.640
発行日 2025年5月20日
Published Date 2025/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800050640
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消化器外科医の魅力とは何でしょうか.私は学生や研修医から「なぜ消化器外科を選んだのですか?」と尋ねられると,決まって「ブラックジャックみたいになりたかったから」と答えます.もちろん,彼のようにすべての領域の手術をこなすことは現実的ではありません.しかし,可能な限り多くの分野に精通し,幅広い治療を提供できる外科医になりたいと考えていました.抗がん剤の知識を持ち,緩和医療を理解し,呼吸管理や透析にも対応できるようになりたい.そうした思いのなかで選択を重ねるうちに,私は消化器外科医となり,肝胆膵外科を専門とするようになりました.
若手の先生方にとって,「いつかはやってみたい消化器外科の手術」とは何でしょうか.私が研修医のころ憧れていたのは,「肝切除」「膵頭十二指腸切除」「食道切除」「骨盤内臓全摘」でした.どんな状況でも腹腔内で適切に対応できるようになりたい.その思いが私を突き動かしてきました.しかし,現在は専門分化が進み,若手外科医のなかには「自分の専門領域だけを極めればよい」と考える人もいるかもしれません.しかし,それは自らの可能性を狭めることにもつながります.

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