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編集後記
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pp.468
発行日 2026年4月10日
Published Date 2026/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220540040468
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佐藤愛子さんの大ヒットエッセイを映画化した「九十歳。何がめでたい」(2024年)を配信にて鑑賞しました.数年前に断筆宣言をした愛子先生(草笛光子さん)は素敵な邸宅で娘の響子(真矢ミキさん)・孫の桃子(藤間爽子さん)と同居し何不自由ない老後を過ごしているはずが,生きる張り合いを失っていました.そこに,活力はあるものの人生がうまくいっていない雑誌編集者・吉川(唐沢寿明さん)が現れ,強引に雑誌連載を始めさせられることとなります.吉川と過ごすドタバタの日常のなかで,愛子先生は社会への批判精神や愛着を取り戻していく……というハートフルストーリーです.
コメディなのにどことなくロマンティックなのは,主役二人の関係性が名作ミュージカル「グランドホテル」での,老いの現実に打ちひしがれるバレリーナと彼女を騙すつもりが愛してしまう男爵のそれに似ているからでしょうか.老バレリーナの名言「joie de vivre(生きる喜び)」が,作中の記者会見での愛子先生の発言に重なります.公開時の映画館が後期高齢者世代のマダムたちで大盛況だったと聞くにつけ,長寿時代のロマンスの新しい在りようが感じられ,登場人物の誰もが不幸にならない大団円の希少性をしみじみ思わされました.そしてなんと,今月には佐藤愛子先生は新刊『ぼけていく私』を響子さん・桃子さんとの共著で上梓されるとのこと,これまた話題となりそうです.

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