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編集後記
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pp.750
発行日 2025年7月10日
Published Date 2025/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530070750
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話題の映画「教皇選挙」を観てきました.リベラル派の教皇が急死し,バチカンでのコンクラーヴェ(教皇選挙)を首席枢機卿ローレンスが取り仕切ることとなります.世間から完全隔離された密室での政治劇に差別問題やスキャンダルの露見,前教皇の遺言のミステリー,そしてあっと驚く結末と,観客を飽きさせない2時間です.本作の魅力はイタリアの名門映画スタジオであるチネチッタの素晴らしい美術,静謐な音楽,図像学に根差した映像演出など多々ありますが,やはり物語を展開させるセリフの数々こそが珠玉と言えると思います.司祭には司牧者(=カリスマ)と農場管理者(=マネジャー)の2タイプがいると生前に語った教皇.「確信」を得ることのリスクを語る主席枢機卿ローレンス.異教徒と戦うためのコンクラーヴェだと気焔を吐く超保守派の有力候補に対し,本当の戦争は心で行うものだと語るカブール枢機卿.老成した俳優陣のセリフによって描出されるきわめて現代的な課題—閉じた組織内の力学,管理者の苦悩などとともに,「神がそうあるようにつくったままの自分で奉仕する」という主題は,本誌でもテーマとなる「特性の受容と社会参加」に通じるものがあるように思え,深い感銘を受けました.

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