Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「劇場版 アナウンサーたちの戦争」—「言葉の力」と戦争の関係を凝視する
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.849
発行日 2025年8月10日
Published Date 2025/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530080849
- 有料閲覧
- 文献概要
この数年,過去作も含めてNHKの連続テレビ小説を視聴しているが,主人公は近現代を駆け抜けた人物であることが多く,いきおい戦時中の人々の生活や意識の構造が繰り返し描かれることになる.それは,現代の私たちの生き方の原点を探る営みである.例えば,1944年に日本放送協会(現NHK)のアナウンサーとして採用された女性を主人公とする「本日も晴天なり」(1981〜1982年放送,2022〜2023年再放送)は,映画「日本のいちばん長い日」(1967年版,2015年版)でも知られる玉音放送阻止に動く叛乱軍と放送局員との攻防を描き,結果として2023年8月14日に放送されたNHKスペシャル「アナウンサーたちの戦争」,2024年公開の「劇場版 アナウンサーたちの戦争」(演出/一木正恵)の前振り作品となった.
さて,「劇場版 アナウンサーたちの戦争」のことである.戦時中のアナウンサーたちは,ラジオ放送で戦意高揚を図るプロパガンダや,偽情報で日本軍の作戦を有利に導く「電波戦」を担っていたが,本作はその実相を描いたものである.歴史への反省から,当時のアナウンサーたちを実名で登場させている.ここでは和田信賢(森田剛)と館野守男(高良健吾)にスポットを当てる.
Copyright © 2025, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.