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特集 医療と福祉の工学連携
介護支援ロボットの社会実装に向けたリビングラボの活用と展望
Harnessing Living Labs to promote the real-world adoption of care robot technologies
加藤 健治
1
Kenji Kato
1
1国立研究開発法人国立長寿医療研究センター健康長寿支援ロボットセンターロボット臨床評価研究室
1Assistive Robot Center, National Center for Geriatrics and Gerontology
キーワード:
ロボティクス
,
介護
,
リビングラボ
,
社会実装
Keyword:
ロボティクス
,
介護
,
リビングラボ
,
社会実装
pp.483-489
発行日 2025年5月10日
Published Date 2025/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530050483
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はじめに
少子高齢化が急速に進む現代社会において,日本の高齢化率は世界的にも類を見ない速さで上昇しており,介護人材の不足,社会保障制度の持続可能性,介護サービスの質の維持といった課題が喫緊の社会問題となっている.こうした背景のもと,最新のロボット技術の導入は,介護者の過度な身体的負荷の軽減だけでなく,より安心で安全な介護の実現や,被介護者の自立支援の促進にも寄与する可能性がある.
しかし,技術的に優れたロボットを開発するだけでは十分ではなく,それを適切に介護現場へ適応させ,社会実装を加速させるための実証研究が不可欠である.特に,定量的エビデンスに基づいた評価が求められ,介護者や被介護者のニーズに適した技術の検証が重要となる.
そこで,ロボットを含む先端技術の社会実装を推進するための開発拠点として,「リビングラボ」が注目されている.リビングラボは,実生活環境を再現したフィールドであり,開発企業,研究機関,自治体,さらにはユーザーである介護従事者や高齢者など,多様なステークホルダーが参画し,それぞれのニーズに即した検証を行う場として機能する.本稿では,国立長寿医療研究センターのリビングラボの特徴と研究事例を紹介し,それらを通じて得られた知見をもとに,介護施設におけるロボットの長期導入とその効果検証の事例について述べる.最後に,リビングラボが今後果たすべき役割や,直面する課題について考察する.

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